第二章 李門と魏粛

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「巡行はこの街にも来るのか」 李門はこの街の名家と言われる人たちが集まる集会に、主人の代わりに出ていた。 今、この街は最大の危機に陥っていた。 始皇帝と言われる中国を統一した男が、この街に巡行で立ち寄る事になったと言う。 「まったく。こんな田舎まで来て何をしようと言うのだ…」 「各地でかなりの数の殺戮が行われているらしい」 「町ごと殺されたところもあると言うぞ」 「そんな男が中国を統一したのだ。これですべて終わる…」 口々に始皇帝の巡行の噂を語っていた。 しかし、それが事実かどうかは李門にもわからなかった。 「とにかく、始皇帝がこの街に立ち寄るのは事実です。その間、粗相がなければこの街の評価は逆に上がります。今は良い方向に考えましょう」 李門はそう言うとお茶をすすった。 「李門さんの言う通りだ。今は上手く切り抜ける方法を考えよう。彼らは来るなと言っても来るのだ。そうだろ…」 長老はそう言って杖を突いたまま笑っていた。 李門はその長老を見て微笑んだ。
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