34人が本棚に入れています
本棚に追加
魏粛はふと街角で立ち止まる。
一人の男がある家の軒下で座っているのを見つけた。
「王さん。こんなところでどうしたんだ」
魏粛はその王という男に声をかける。
「魏粛さん。どうも今朝から調子が悪くて」
王は力なく手を上げ、魏粛はその手を握った。
「少し熱があるな。よし」
懐から革の包みを出して王に渡した。
「これを飲め。今日は家に帰って休むんだ。大丈夫、明日には元気になるよ」
「いや…。薬代なんて持ってないよ。良いよ。心配ない。ここで少し休んだら元気になる」
「何を言ってるんだ。困った時はお互い様だ。早く飲め。祭承の薬だ。間違いないよ」
そう言うと包みを開けて無理矢理一粒、王の口に押し込んだ。
そして王の腰に下がった竹筒の水を流し込んだ。
「これで大丈夫だ。早く帰って寝てな」
「すまないね。お代は必ず払うよ」
王は力なく笑った。
「そんなもんは心配しなくて良いよ。治ったら美味い酒を一杯、御馳走してくれ」
そう言うと魏粛は立ち上がり王の手を引いた。
「ありがとう。魏粛さん」
王は礼を言うとフラフラと歩き出しだ。
魏粛はそれを見て王の前にしゃがんだ。
「ほれ。家まで送るよ。おぶさりな」
半ば無理矢理背負うと魏粛は歩き出した。
最初のコメントを投稿しよう!