第二章 李門と魏粛

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魏粛はふと街角で立ち止まる。 一人の男がある家の軒下で座っているのを見つけた。 「王さん。こんなところでどうしたんだ」 魏粛はその王という男に声をかける。 「魏粛さん。どうも今朝から調子が悪くて」 王は力なく手を上げ、魏粛はその手を握った。 「少し熱があるな。よし」 懐から革の包みを出して王に渡した。 「これを飲め。今日は家に帰って休むんだ。大丈夫、明日には元気になるよ」 「いや…。薬代なんて持ってないよ。良いよ。心配ない。ここで少し休んだら元気になる」 「何を言ってるんだ。困った時はお互い様だ。早く飲め。祭承の薬だ。間違いないよ」 そう言うと包みを開けて無理矢理一粒、王の口に押し込んだ。 そして王の腰に下がった竹筒の水を流し込んだ。 「これで大丈夫だ。早く帰って寝てな」 「すまないね。お代は必ず払うよ」 王は力なく笑った。 「そんなもんは心配しなくて良いよ。治ったら美味い酒を一杯、御馳走してくれ」 そう言うと魏粛は立ち上がり王の手を引いた。 「ありがとう。魏粛さん」 王は礼を言うとフラフラと歩き出しだ。 魏粛はそれを見て王の前にしゃがんだ。 「ほれ。家まで送るよ。おぶさりな」 半ば無理矢理背負うと魏粛は歩き出した。
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