第二章 李門と魏粛

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「祭承様。遅くなりました」 鯉に餌をやる祭承の後ろに立ち、手を隠して李門が一礼した。 「李門か…。接待は上手くいきそうか」 祭承はちらと振り返り李門を見ると、再び鯉に餌をやりながらそう言う。 「皆、始皇帝に恐れ戦いております。我々は今出来る事を精一杯するまでです」 そう言うと李門も微笑んだ。 「今出来る事か…。いつの時代もそうだ。自分が今出来る事しか出来んのだ。それ以上の事はする必要はない」 祭承は手についた麪筋の粉を払った。 「ところで魏粛はどうした」 「私は会っていません。街ではないかと…」 李門は祭承の足元を気にしながら手を取った。 「すまない」 祭承は李門に礼を言い、庭の玉石を踏んだ。 「後で魏粛と一緒に私の部屋に来てくれ」 祭承は振り返り李門を見た。 「なに…畏まる事はない。たまには三人でゆっくり話がしたいと思っているだけだ…」 そう言うと祭承は歩き出した。 「承知致しました…」 李門は祭承の背中に一礼した。
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