第二章 李門と魏粛

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「この薬でございます」 趙高は始皇帝の政が、その器を受け取るのを見て侍女に顎で引けと命令した。 侍女は音も立てずに出て行った。 「これが不老不死の薬なのか趙高…」 始皇帝は腹に響く野太い声で趙高に聞いた。 「はい。これが蛮族に伝わる不老不死の妙薬と言われております」 趙高は手を隠した両腕を掲げ始皇帝に拝した。 「大変貴重なモノだと、蛮族の長からの献上品でございます。多く飲むと毒になるが、少量を飲むと不老不死の薬になるそうです」 始皇帝はその器を切れ長の目で睨む様に見た。 「多く飲むと毒に…。酒と一緒じゃな」 始皇帝はそう言って笑った。 「その通りでございます」 趙高がそう言うと始皇帝の前に控える者が一斉に声を出して笑った。 始皇帝は生きる事に固執していたと言われている。 そのために水銀まで飲んだという記録が残っている。
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