第二章 李門と魏粛

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「入りなさい」 中から祭承の声がした。 李門と魏粛は顔を見合わせて戸を開けた。 祭承の部屋には香の煙と香りが漂っていた。 「魏粛と一緒に参りました」 李門はそう言うと手を隠し、祭承に礼をした。 「待っていたよ。すまんな、わざわざ…」 祭承は立ち上がり、二人を自分の座る卓の向かい側へ促した。 李門と魏粛はゆっくりと祭承の向かいに立った。 「まあ、座ってくれ」 そう言って祭承が座ると、それを見て二人も座る。 祭承の部屋からは綺麗な満月が見えていた。 祭承は二人の顔を見ると、身体を外に向け、月を見た。 「綺麗な月だな…」 李門と魏粛は祭承と同じ様に月を見た。 月明かりと、部屋に煙る香が異様な空気を醸し出していた。 「魏粛。お前は幾つになった…」 祭承は月を見たまま、呟く様に言った。 「はい。今年二十二歳になります」 魏粛も月を見たまま答えた。 「李門。お前は」 「はい。私は二十六歳になります」 李門も月に見とれていた。 「そうか」 祭承は月から目を下ろして、李門と魏粛に言う。
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