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「私がこの街に来てこの薬商を開いたのが二十二歳だ。あれから三十年。この街も大きくなった。人も増え、病も減った。私の望んだ事だ」
妙に神妙な話に李門と魏粛は緊張していた。
「私は昔、一度死んだ。いや…死ぬ筈だった。私は十五歳の時に重い病で、死ぬ筈だった」
李門と魏粛が初めて聞く話だった。
「しかし、それを紅雀と青雀という仙人に助けられた。ある薬をもらってな…。その薬はどんな病もただの一粒飲めば治してしまうという仙人丹だった。私はそれを飲んだ。だから私の今はある…」
祭承はそう言うと立ち上がって庭の池に映る月を見た。
「そんな薬があるのですか…」
「すごい。そんな薬があれば…」
李門と魏粛は口々にそう言う。
「そんな薬があれば…何だ」
祭承は振り返った。
「そんな薬があれば重い病の人を救えるか。そんな薬があれば大金持ちになれるか…」
「自分に出来る事が増えるのでは…」
李門はそう言った。
「そうか。それはそうかもしれんな…」
祭承は二人に微笑んだ。
そして、自分の後ろにある木箱を取り二人の前に置いた。
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