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「大石健一さん。あなたは今日、進行性胃癌で余命宣告をされました。そうですね」
男は立ち上がり、部屋を歩き出した。
「…」
健一は答えず、テーブルに肘を突いて頭の前で手を組んだ。
「その余命は三カ月から半年。残された道は延命治療しかない。そう言われましたね」
「…」
健一は目を閉じた。
確かに医者にそう言われた。
しかしなぜ、この男はそんな事まで知っているのだろうか…。
病院と密に繋がっているホスピスの斡旋業者なのだろうか。
今の健一には男を疑う事しか出来なかった。
「私の名刺、お渡ししましたね」
男は窓の傍に立って健一を振り返った。
健一は男にもらった名刺をポケットから取り出した。
『パーフェクトライフコンサルティングオフィス倉田遼平』
名刺にはそうあった。
「何の会社なのですか」
健一はその男、倉田に聞いた。
「はい。今からその説明をさせて頂きます」
倉田はそう言いながら、健一に近づいてきた。
「今日あなたをここに連れてきた理由はそこにありますからね」
健一はテーブルの上に皺の寄った名刺を置いた。
倉田は健一の向かいに座った。
「大石健一さん。あなたもっと生きたくありませんか」
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