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健一はその言葉に躊躇した。
今日、余命宣告された人間に聞くには愚問過ぎた。
だがその質問に答える事は出来なかった。
それはあきらめに似たモノからだったのだろう。
倉田はソファに深く腰掛け脚を組んだ。
「この箱の中には、あなたの可能性が入っています」
そう言うとテーブルの上に置いた木箱を見た。
「可能性…」
「そうです。可能性です」
倉田は身体を起こした。
「あの…意味がわからないのですが…」
健一はテーブルの上の箱と倉田の顔を交互に見た。
倉田は微笑んで木箱を手に取った。
そしてゆっくりとその箱を開けた。
「これがあなたの可能性です」
倉田は箱の中から小さな紙包みを取り出し、健一の前に置いた。
薬の様なモノだと言う事は健一にもわかった。
少し薬草の様な匂いもしている。
「薬ですか…」
「はい。薬です。しかし、ただの薬ではありません」
倉田は再びソファに深く座った。
「民間療法というモノですか。この薬を私に飲めと言う事ですね」
健一は少し笑ってそう言った。
「平たく言えばおっしゃる通りです。しかし、私どもは単なる民間療法をお勧めしている訳では無いのです。この薬を一つ飲めばあなたの病気は完全に治る可能性があるのです」
健一は更に笑った。
「要は新薬の実験に私を選んだと言う事ですか」
その健一の言葉を遮る様に強い口調で倉田は、
「それは違います。これは新薬ではありません。どちらかと言うと、この薬はかなり古くからあるモノです。そしてもうこの薬は何人もの人が飲んだ実績のある薬です」
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