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「手を繋いで、歩きませんか?見えなくなると、困るので」
少し、少女は考え。
「うん。いいよ、はい」
手を差し出され、その小さな手に自分の手を重ねる。柔らかなその手は、女性だと物語っていて、やはり女性なのだとここでようやく確信できた。
「どこなの?おねーさんの家」
「えっと……この道をまっすぐ行って、右に曲がって――」
「――ああ、やっぱいいや!その時になったら言って!」
面倒になったのか、言い終わる前に言われ「わかりました」と少しだけ苦笑をもらし、歩き始めた。
「お名前を、教えてくれませんか?」
「紅鸞(コウラン)。おねーさんは?」
「黎扇明と言います。お好きな方でお呼びください」
にこっと笑いかける。
そして、また歩き出した。
家に帰るまでの道中、「こっちだよ」「そっちじゃないです」「こっちだって」「嘘はよくありませんね」と言った攻防が繰り広げられた。
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