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散歩中に、突然雨が降り出した。
雲行きが怪しかった為、傘を一応持って来ていたのだが、どうやら正解だったようだと、街行く人々を眺めながら思った。濡れてもよかったのだが、服が濡れるのが気がかりだったのだ。
(おや)
パタパタと雨の中を走っている少年が目についた。傘を持っていなかったようで、見たところ雨宿りを出来る場所を探しているのかキョロキョロ辺りを見渡している。だが、先に雨宿りしている人がいたり、そもそも雨宿り出来る所がない為、困っているようだ。
あのままだったら風邪を引いてしまいそうだな、と足を止めて眺めていたら、その少年が雨によって濡れ、滑りやすくなっている地面につるっと足を取られ、後ろに盛大に転けた。
(あら)
その姿を見て、痛そうだなと思いながら、ポケットからハンカチを取り出して少年に差し出した。
「大丈夫ですか?」
尻餅をついている少年に声を掛けると、扇明の顔を見上げ、顔をカッと赤らめた。
尻餅をついている所を人に見られて、恥ずかしかったのかと思い、悪い事をしてしまったなと心の中でため息をもらした。
「だ、大丈夫…です」
ハンカチを受け取らず、パッと立ち上がりぱぱっと払う。が、濡れている為、汚れがとれる事はなく手が汚れてしまっている。それを見て、「失礼」と声をかけてから少年の手を取った。
「な、なにを…?」
「汚れたままでは、嫌でしょう?」
少年の汚れてしまった手を拭いて「綺麗になりましたね」と声を掛けると「…ありがとう、ございます」と目を逸らして言われ、恥ずかしがり屋さんなのかな?と笑みをもらした。
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