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この雨はすぐ止むだろう。だが、今すぐにと言うわけではない。
このまま自分が行ってしまうのは簡単な事だが、そうするとこの少年はまた雨に打たれる事となる。そうならない為には、どうするのが一番かと少しだけ考えてから、少年に声をかけた。
「雨が上がるまで、一緒にいて頂けませんか?」
傘を渡して、自分が雨に打たれるでもよかったのだが、傘が返ってくる保証はないし、少年に罪悪感を抱かせてしまうかもしれない。だったら、こちらの方が良い考えなのかなと考えた。
知らない人と一緒に少しの間いてくれればの話なのだが。
「えっ?」
「嫌ならいいのですが…。この少し肌寒い中、一人で居るのが少しさみしくて。貴方が居てくれれば、きっと楽しいと思いまして」
ダメですか?
首を傾げて聞くと、少年は「ど、どうしてもって言うならいいですよ」と嬉しいのが隠し切れていない声で言われ、こんなにチョロくて大丈夫かと自分で言っておきながら少年の身が心配になった。
「ええ、貴方じゃなきゃだめです。申し遅れました、私、黎扇明と申します。お好きな名前でお呼び下さい」
「僕は、藍憐って言います」
「藍憐さんですか、良い名前ですね」
「ううううるさいです!」
顔を真っ赤にして否定する藍憐を見て、まさかこれが世に言うツンデレ…?と言うやつなのでは?と心の中で思い、面白い人に出会ったな、と笑みをもらした。
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