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「まさか列車でご一緒出来るとは思いませんでした。これもまた、何かの運命でしょうかね」
ふふと笑いをもらす扇明に対し、セミロングの金髪を揺らし辺りをキョロキョロと見回すウサコ。
紅の瞳が揺れて、普段とは見慣れない土地に不安を感じているのではないかと推測。
現在、ウサコと扇明は南の共和国へ来ている。
つものように笑みを浮かべ、人差し指を一本顔の前で立てて、一つの提案をした。
「よければ、飲み物を一つ。奢らせて頂けませんか?」
「えっ?」
ようやく自分の方を見た瞳はやはり不安の色が浮かんでいて、このままウサコを一人にするのは心配だなと感じた。
(劉虎さん…いつも、こんな気持ちなんでしょうか)
この前、海で出会った時も心配そうな表情の中に心配と焦りとそして少しの疲れが見てとれたような気がした。
(……まあ、それ以外にも見えたには見えたのですが)
その話は、やめておこう。
「喉が渇いていませんか?ここで出会ったのも何かのご縁です。どうでしょうか?」
「え……あ、…でも」
「実は、お札を小銭に割りたいと思っていまして特に買いたい物もないのでよければなー…と思ったのですが、ダメでしょうか」
顔を覗き込み、じっと瞳を見つめ続けると「わ、分かりました!」とウサコの方から折れてくれた。
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