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「なるほど。では、悪い事をしてしまいましたね」
「え?」
「数粒、私のせいで無駄にしてしまいましたから」
先ほど、ぱらぱらと落ちて行った物は金平糖だったのだ。食べ物は、粗末に扱ってはいけないと習った。
その習いからすると、自分のせいで金平糖を無駄にしてしまったのは、粗末に扱った事になる。
「よければ、私とデートをして頂けませんか?お時間があればの話なのですが」
戸惑った様子を見せる女性に、扇明は「だめ…でしょうか」と少しだけ、悲しそうな顔を見せる。
「あ、え…っと、少しだけなら…」
少し慌てた様子で返事をくれたので、悲しそうな顔をから、にこっと笑顔に変え「それでは、参りましょうか」と、女性の腰に手を添えた。
「私が無駄にしてしまった金平糖の分くらいは、楽しませてみせます」
だから、気を抜いて下さい。
そう視線で語りかける。少し照れているのか、目線を下げてしまう。こういう事は、されなれていないのか?と思った。
「あ、名乗り忘れていましたね。私、黎扇明(レイシャンミン)と申します」
苗字でも名前でも、お好きな方でお呼びください。と付け加えた。
「私、雪梅(シュェメイ)と言います」
(雪梅……)
何度も心の中で名前を繰り返し、覚えるよう努力した。一度名乗られただけでは、あまり覚えられない癖があったから。
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