ツいてる日

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「んじゃ、始めるか」 男はニッと笑い、開始の言葉を発したので、扇明は、パチパチと楽しみだと思いつつ、小さな拍手を一人の男へと送った。 くすみのある、ブロンドカラーのくせがある髪。長いのか、肩から先は、三つ編みにしてまとめている。褐色の肌。暗い赤色の目。無駄がない筋肉がついているのが服の上からでも、分かる。首から下げている、金色のウロコ。 (……この人) 扇明が注目したのは、背中と骨盤から生えている、ヒレ。外側がオレンジで、内側が金色。先端が白色。とても大きく、男の身長と同じぐらいはあるのではないか。 (……私と、同じ金魚型…) なんだか嬉しくて、にやけが止まらない。へへと笑っていると、男は不思議そうな顔をしていた。 音楽が鳴り、男は後ろへ、宙返りをする。手を付けずにする事が、凄くて「おぉ~」とパチパチと拍手を送る。 初めて見るわけではないが、ここ数年は、意識して見た事がなかったので、久しぶりで、わくわくする。 音楽に合わせて演技をし、肩の上に片足を乗せる、扇明には絶対に出来ないような、芸当を終始見せられ、ずっと拍手を送ってばかりだった。 「ありがとうございました」 お辞儀をして、終焉の言葉を紡いだ男に、扇明は、大きな拍手を送った。良い物が見れたと、頬が緩みっぱなし。 「好!大変、よい物を見れました」 「そうかい?ならよかった」 にやにやと笑う男。それに、扇明は、へらへらとは少し違うが、緩む頬を抑えつつ、言った。 男が少し動くと、耳のヒレに付いている、飾りのついた青い玉が揺れる。腰には、ひょうたんが携えている。飲み物でも、入っているかと思う。
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