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「失礼。お名前をお伺いしても、よろしいでしょうか?」
ひょうたんに入っている、飲み物を飲んでいる男に扇明が聞くと、「ぷはっ」と声を上げてから、栓をして。
「瑠金(リュウキン)って名だ。アンタは?」
口元についてしまった酒を、腕で拭きながら、聞いてくる瑠金。匂いで、ひょうたんの中に入っているのが、お酒だと分かった。
「黎扇明(レイシャンミン)と申します」
お好きな名前で呼んで下さい。
少しずつ、しまり始めた頬を手で触りながら、言った。苗字で呼ばれても、名前で呼ばれても、扇明にとってはあまり大差はない。
だが、相手が自分の事を、どちらの名前で呼ぶのか。それとも、違う名前で呼ぶのか。それが、少しだけ気になるから、こちらで呼んでくれとは言わない。
「黎、か」
瑠金は苗字で呼ぶ。人によって、様々だなと思いながら、「はい」と笑顔で答えた。
「また、機会があれば、拝見したいです」
「俺はこの辺りでやってるから、いつでも見れると思うぜ」
この辺りは、あまり来ないのだが、瑠金がいるのであれば、また来てみようかなと思った。
「失礼ですが、年はいくつで?」
「28。もっと若く見えたか?」
にやにや笑いながら言われ、「え、えぇ」と少し動揺しながら言った。自分と同じぐらいか少し上かと思っていたので、予想の遥か上を行っていた。
人は見た目じゃないと分かっていたつもりだが、やはりどこかで見ている所があったのだろう。
「瑠金さんのおかげで、今日はツいている日になりました。それでは、失礼します」
軽く頭を下げて、扇明はその場を立ち去った。
(そういえば、男だと言う事を言うの忘れてました。勘違いしてるかな?まあ、いいか)
今度会ったら、言おうと軽い気持ちで歩き進めた。
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