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小さな私は、公園の土管の中で1人うずくまり泣いていた。
お父さんとお母さんが離婚した日だ…
お母さんが言う…
「瑞穂…お父さんとお母さんはもう一緒には暮らせないの。お父さん…もうお母さんの事、好きじゃなくなったんだって…。」
お母さんは、俯いて泣いていた…
「どうして?瑞穂は、お父さんもお母さんも大好きだよ。どうして? ねぇ、どうして好きじゃなくなるの?」
何を聞いても…何を話しかけてもお母さんは何も言わず、ただ泣いていた…
子どもの頃から、何度も同じ夢を見る…
小さな私の胸に残る傷…。
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ハッと目が覚めた…。
またか…なかなか癒えないものだな…
ぼんやり天井を見つめた。
ビッショリ汗をかいていた。
やっぱり風邪なのか、体が重い…
右手に携帯を握ったままだった…
…左手…重い…
え? え?
ゆっくり左を向くと、そこには私の手を握りベッドの横に座り、上半身を預ける形で寝ている義兄がいた。
「な…なんで?」
体を起こし、左手を振りほどこうとブンブン手を振る…
…ほどけない左手…
「何でここにいるの? 何で私の家知ってるの? …ってかどうやって入ったのよ。」
握られた左手が、更に強く握られた。
「万樹ちゃんに、教えてもらった。大家さんに、妹が病気で倒れてるって言ったら、身分証明書見せろって言われて…んで開けてくれた…。何回チャイム鳴らしても出ないから。」
目を閉じたまま話す義兄。
私は何も言えずにいた…
…本当に心配してくれてたんだ。
そう思うと申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「…ごめんなさい。」
ポツリと呟いた…。
…でも返事がなくて…
「昨日は…ブッて…ごめんなさい。」
また…呟いた…
…それでも返事が無くて…
凄く怒ってる…よね?
「…あと…メガネ…」
そう言いかけた時、義兄が顔を上げ、一気に私を抱きしめた…
フワリと優しい空の様な香り…
私の耳に、義兄の頬がピッタリとひっついていた…
…ひんやりとした頬…
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