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第3話
~紐解く過去~
万樹の夢を聞いてから、私は私の夢を見つける為に何をしたら良いのかを考えていた。
篤さんとは、あの日駅のホームで見かけた以来だ。
隣にいた女性はきっと恋人…。
そう思う事で、自分の気持に蓋をしていた。
私の人生は、手に入らない事ばかり。
お父さんとお母さんがいる普通の家族も、好きな人も、自分がやりたい事も見つからない…。
季節は肌寒い秋から、本格的な冬を迎えていた。
そして、毎年12月はお義父さんの誕生日でみんなが揃う日でもある。
お母さんは、この日も嬉しそうに、恋する少女のようにお父さんの為にケーキを焼いている。
お義父さんを想って焼くケーキは、さぞ甘いんだろう…。
生クリームを一口味見をしようとしたら、お母さんにペチッと手を叩かれた。
お母さんは、私を見て笑っていた。
お母さん…幸せそう。
そう感じた。
「瑞穂、就職活動の方はどう?」
「なかなか…本当にやりたい事が見つからないんだよね。」
「そっか…今の時代、就職するのも大変よね。」
「うん。」
「瑞穂、お見合いしない?」
「またまた冗談を。」
「冗談じゃないわ。彼の知り合いにとってもステキな人がいて…今日、いらっしゃるの。」
「またまた冗談を。」
そう言った時、玄関のチャイムが鳴った。
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