第3話

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お母さんに招かれ、リビングに1人の男性が現れた。 背はさほど高くはないものの、スーツをパリッと着こなし、短髪で清潔感溢れる男性だ。 「初めまして、大木 誠です。」 爽やかな笑顔に、お母さんが嬉しそう… 「ほらほら、瑞穂もご挨拶なさい。」 「初めまして。浅川 瑞穂です。」 初対面の人…お見合い… その事が頭の中をぐるぐるとまわる。 「瑞穂さん、緊張しないで下さい。今日は、専務のお誕生日にお招き頂きありがとうございます。」 また爽やかな笑顔で話すから、お母さんのテンションが上がる。 そして… 「ただいまぁ~美和子。お、大木君、よく来てくれたね。」 お義父さんが帰り、お母さんのテンションはMAXになる。 お父さんの腕にまとわりつき、2人してイチャイチャして…その場にいる、私も大木さんも目のやり場に困っていた。 …そして 「ちょっと、そーゆーのは2人の時にしてくれない?」 冷ややかな声が頭の上から降って来た。 胸がドキッと高鳴り、振り返るのが怖い。 体を強張らせていた。 あの日の…篤さんに抱きしめられた日の事が蘇る。 そして、電車で女性と一緒にいた事… 胸がドキドキしたり苦しくなったり…顔は熱くなるし… 「瑞穂、ただいま。」 そんな事、今まで一度も言った事がないのに、篤さんが優しい声で言うから… ゆっくり振り返る… 真っ直ぐに私を見つめる視線は、とても柔らかくて… 「お帰りなさい。」 真っ赤になった顔を見られたくなくて、俯いて声が小さくなった。
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