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お母さんに招かれ、リビングに1人の男性が現れた。
背はさほど高くはないものの、スーツをパリッと着こなし、短髪で清潔感溢れる男性だ。
「初めまして、大木 誠です。」
爽やかな笑顔に、お母さんが嬉しそう…
「ほらほら、瑞穂もご挨拶なさい。」
「初めまして。浅川 瑞穂です。」
初対面の人…お見合い…
その事が頭の中をぐるぐるとまわる。
「瑞穂さん、緊張しないで下さい。今日は、専務のお誕生日にお招き頂きありがとうございます。」
また爽やかな笑顔で話すから、お母さんのテンションが上がる。
そして…
「ただいまぁ~美和子。お、大木君、よく来てくれたね。」
お義父さんが帰り、お母さんのテンションはMAXになる。
お父さんの腕にまとわりつき、2人してイチャイチャして…その場にいる、私も大木さんも目のやり場に困っていた。
…そして
「ちょっと、そーゆーのは2人の時にしてくれない?」
冷ややかな声が頭の上から降って来た。
胸がドキッと高鳴り、振り返るのが怖い。
体を強張らせていた。
あの日の…篤さんに抱きしめられた日の事が蘇る。
そして、電車で女性と一緒にいた事…
胸がドキドキしたり苦しくなったり…顔は熱くなるし…
「瑞穂、ただいま。」
そんな事、今まで一度も言った事がないのに、篤さんが優しい声で言うから…
ゆっくり振り返る…
真っ直ぐに私を見つめる視線は、とても柔らかくて…
「お帰りなさい。」
真っ赤になった顔を見られたくなくて、俯いて声が小さくなった。
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