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お義父さんの誕生日パーティーの為に用意した、お母さんの手作りケーキや料理の凄さに、大木さんは目をまん丸にしていた。
「瑞穂さんも、お料理好きなんですか?」
「いえ…私は…。」
「今度、僕の為に作って欲しいなぁ~。」
私の話しなんてスルーして、自分の要求ばかり…
大木さんって…本当に良い人なの?
…良い人なのかもしれない…でも私はきっと、好きにはなれない…そう思った。
窓の外を見ると、すっかり暗くなった空に浮かぶ小さな星達がみえた。
フーッと息をついて…今日の疲れがドッと押し寄せる。
「大木、今日は朝まで飲むぞ。」
だなんて上機嫌のお義父さんをよそに、篤さんが席を立った。
「俺は、帰るよ。」
「じゃぁ、私も帰るね。」
私も、このタイミングを逃すものかと席を立った。
話しに夢中な2人をよそに玄関先でお母さんが私に
「瑞穂、良い話だから…考えておきなさいね。」
そう言うお母さんに苦笑いをして外へ出た。
「瑞穂、送るよ。」
篤さんが、クルマを指差し…
「まだ、電車があるから大丈夫です。」
緊張して乗れない…
「駅まで、夜道は危ないでしょ。俺お酒飲んでないし。」
篤さんの顔を見て…そう言えば、ずっとお茶を飲んでいたな…っと思っていたら、グッと腕を引き寄せられた。
「乗って。」
助手席のドアを開けどうぞと誘導された。
…なんか捕まった感…。
車という、密室で2人きり…緊張感が急に高まる。
彼女がいるんだから…自分で自分の気持ちにブレーキをかける。
ゆっくりと走り出した車は、ピアノを優しく弾語る曲が流れていた。
…初めて…篤さんはこんな曲が好きなんだ…篤さんの事は何も知らないから、嬉しくて自然と笑みがこぼれた。
「何を嬉しそうにしてるの?」
真っ直ぐ前を向く篤さんの優しい声…。
見られてた恥ずかしさで顔が火照ってくる。
信号で止まった車…
篤さんの大きな手が私の頬に触れる。
ビクッとした私に篤さんは、
「顔赤いよ。飲み過ぎた?」
「そ…そうかも…。」
って、ごまかした。
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