第3話

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時々、運転する篤さんの横顔をチラッと見る。 鼻筋が通り、キレイな肌…ブラウンの瞳… …その瞳に映るのは私じゃなく、あの女性… その大きな手、大きな胸に抱きしめられるのもあの女性… …私じゃない…そう思うと、胸をチクチクと刺されるような感じがして、苦しい。 恋って簡単に消せない? 好きって気持ち…これは消さなきゃいけない… こみ上げだ苦しさと、押し殺した気持ちで胸が張り裂けそう… 1人になりたい…辛くなるなら恋なんかしたくない… 車の中は、静かにピアノの曲が流れていて、一緒に車の中にいるのに1人きりのような空気が流れていた…。 俯いて、泣きそうな淋しさをグッとこらえていた。 車はゆっくりと減速し、静かに止まった。 シートベルトを外し、ドアに手をかける。 「瑞穂…待って。」 ドアにかけた手を離し、また俯いて座ると、私の頭を大きな手が撫でる。 ビクッとして顔をあげるとそこには、薄暗い中で私を切なく見つめる篤さん… 頭にあった大きな手が、首の後ろに来て…いっきに篤さんの胸の中に引き寄せられた。 篤さんの胸の中で、訳が分からず…ただ上手く呼吸が出来ない… でも篤さんの規則正しい心臓の音が少しずつ呼吸の乱れを治していく… 私の背中を大きな温かい手がさすっていた。 「大丈夫?」 頭の上から降ってきた心地よい声… 小さく頷き、少しずつ火照った頭がはっきりしてくる。 …私なんで抱きしめられるの? そう思うと、篤さんの胸を両手で押し、離れようとした。 「もう少し…このままで…。」 切なく響く声… この胸の中にいて良いの? …今だけ…そう思うとまた苦しくなっていた。 ポタポタと涙が溢れていた… …涙なんか流したくない…止まってよ…抱きしめないでよ…頭の中…もうグチャグチャ… 抱きしめて欲しい…抱きしめないで欲しい… …好きだよ…でも彼女いるでしょ? 止めたい涙は、止まる事なくどんどん溢れる。 篤さんが私の肩を持ち、体が離れた。 俯いた私…。 「瑞穂…顔あげてよ。」 ゆっくり顔をあげて交わる視線… 「好きだよ…瑞穂。」
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