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美容院の扉を開けると、何時もの風景になんだかホッとした。
その中で、お姉さんの姿を探す…
…いないなぁ…
「ようこそ、瑞穂。」
後ろから声をかけられた…
振り向くと、結城君が微笑んで立っている。
少し伸びた髪…落ち着いた、濃いブラウン、モノトーンでまとめたオシャレな服装は、女の子ならみんな見惚れてしまう程にかっこいい。
「惚れた?」
いたずらに微笑んだ結城君。
「惚れてない。」
ちょっと見惚れただけだもん。
「お姉さんは?」
「今日は、他店にスケットで出かけてる。だから、今日は俺が瑞穂の担当。」
「え?カットできるの?」
「そんな疑いの目…可愛い顔が台無しだね。」
むくれて、プイッとソッポ向いた。
なだめるように鏡の前に座らされ、鏡越しに話しかけられる。
私の髪を触り、髪質を確認…
その指先に、ドキッとしていた。
「なに?やらしい事考えてんの?」
「ち…ちがう?」
「はいはい、分かったから。で、今日はどうしましょうか?」
からかわれてるよね?って、私が変に意識しちゃったのがいけなかったのか…
だって…好きだと告白されて…意識しない方がおかしいよ。
でも、あれから結城君は何も言ってこなかった。
だから、もう何とも思ってないんだろうな。
考え損だな…。
「バッサリ切って下さい。イメチェンしたいの。」
一瞬驚いた顔をした結城君…直ぐにニッコリして任せてって、胸を張っていた。
ゆっくり瞳を閉じた。
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長かった髪がパラパラと床に落ちる…
私の過ごした時間や想いが、なくなって行く…
…でもね、後悔なんてしないんだ。
綺麗さっぱり忘れよう。
「はい、完成。あとは、髪流してブローするね。」
何と無く鏡は見ずに髪を流してもらい、席に戻るとまた瞳を閉じた。
結城君も、それを分かってか手を差し伸べてくれていた。
「さぁ、目を開けてごらん。」
恐る恐る、ゆっくりと瞳を明けた。
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