第3話

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美容院の扉を開けると、何時もの風景になんだかホッとした。 その中で、お姉さんの姿を探す… …いないなぁ… 「ようこそ、瑞穂。」 後ろから声をかけられた… 振り向くと、結城君が微笑んで立っている。 少し伸びた髪…落ち着いた、濃いブラウン、モノトーンでまとめたオシャレな服装は、女の子ならみんな見惚れてしまう程にかっこいい。 「惚れた?」 いたずらに微笑んだ結城君。 「惚れてない。」 ちょっと見惚れただけだもん。 「お姉さんは?」 「今日は、他店にスケットで出かけてる。だから、今日は俺が瑞穂の担当。」 「え?カットできるの?」 「そんな疑いの目…可愛い顔が台無しだね。」 むくれて、プイッとソッポ向いた。 なだめるように鏡の前に座らされ、鏡越しに話しかけられる。 私の髪を触り、髪質を確認… その指先に、ドキッとしていた。 「なに?やらしい事考えてんの?」 「ち…ちがう?」 「はいはい、分かったから。で、今日はどうしましょうか?」 からかわれてるよね?って、私が変に意識しちゃったのがいけなかったのか… だって…好きだと告白されて…意識しない方がおかしいよ。 でも、あれから結城君は何も言ってこなかった。 だから、もう何とも思ってないんだろうな。 考え損だな…。 「バッサリ切って下さい。イメチェンしたいの。」 一瞬驚いた顔をした結城君…直ぐにニッコリして任せてって、胸を張っていた。 ゆっくり瞳を閉じた。 ----- --------------- 長かった髪がパラパラと床に落ちる… 私の過ごした時間や想いが、なくなって行く… …でもね、後悔なんてしないんだ。 綺麗さっぱり忘れよう。 「はい、完成。あとは、髪流してブローするね。」 何と無く鏡は見ずに髪を流してもらい、席に戻るとまた瞳を閉じた。 結城君も、それを分かってか手を差し伸べてくれていた。 「さぁ、目を開けてごらん。」 恐る恐る、ゆっくりと瞳を明けた。
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