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「…すごい…。」
鏡に映る私は、私も見た事の無い私…。
ショートなんだけど、品がある…そう…テレビとかで女優さんがやる髪型。このまま、パーティーにでも出席出来そう。
「どう?気に入った?」
鏡越しに笑顔の結城君に、勢いよく首を縦に振った。
「瑞穂…忘れたい何かがあるのかな?それって、俺じゃないよね…だとしたら、俺がいる店に来ないよね。俺を忘れないでよ。いつだってキレイにしてやる。いつだって瑞穂のために駆け付けてやる。瑞穂の笑った顔が好きだから。」
鏡越しに、そう言う結城の瞳は、今までで1番輝いていた。
髪型変えて良かった…結城君にカットしてもらって良かった。
店の外まで、見送ってくれた結城君。
私の頭に大きな手を置いて
「やっぱり、諦められないよ。振られたのに…でも好きなんだ。」
少し悲しそうで、少し笑ってそう言った結城君。
その瞳に吸い込まれ、寄りかかり、抱きしめられたらきっと楽だろう…。
でも、それは出来ないんだよ。
誰かを愛せるほど、私は愛に溢れて育ってきていない…愛し方も分からない…。
「結城君…あのね…」
「待って…その先は言わないで。また振られたらカッコ悪いでしょ。」
そう言って悲しそうに微笑んでいた。
「待つから…瑞穂が俺を見てくれるまでずっと待つよ。」
そう言って、お店の中へと帰って行った…。
残された私は、暫く立ちすくみ。
ショートの髪に触れる。
お店のガラスに映る自分を見つめ、改めて結城に “ありがとうとごめなさい” を込めてお辞儀をした。
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