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すべての準備が整い、最後にヒールを履く。
結城君が手を添えてくれ、私はギュッとその手を握り、ゆっくりと靴を履く。
履き終えると、以外とヒールが高くて向き合った結城君の口元に私のおでこがあった。
顔の前にある薄いベール、結城君に支えられたら手。
彼の指先に少し力が入った。
見上げると、私を見つめる瞳が優しくて、またドキドキと高鳴る鼓動。
結城君に聞こえてしまう…
そう思った時、結城君は…チュッと私の額にキスをした。
「瑞穂…そのベールをあげるのが俺だったらいいのに…。」
え、え…。
それどうゆう事?
からかってる?
何も言えず、ただぼんやりと結城君の瞳を見つめていた。
ふんわりと抱きしめられると、耳元にまたチュッとキスをされた。
全身がゾクッとする…感じた事のない感覚…
私のパーソナルスペースに意図も簡単に入り込む結城君…でも決して私の心を無視しない…その優しさにまた心が揺れる。
仕事なのを忘れていた…。
パシャ、パシャ、
カメラのシャッター音に驚く2人。
そちらを向くと、凛さんとカメラマン。
「遅いから呼びに来たら…なるほど。要、イチャイチャは仕事が終わってからよ。」
そう言って、私達にウインクをした。
繋がれた手をどちらからでもなく、パッと離し見つ合うと自然と笑い合った。
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スタジオに入ると、新郎役のモデルの男性がいた。
軽く挨拶を交わすと、一気に撮影が始まる。
時々、スタジオの片隅で私を見る結城君と目が合うと優しく微笑んでいた。
みんなに見られて、恥ずかしいと思っていたモデルの仕事は、以外と楽しい。
色んなシチュエーション、色んな大勢で撮られる写真は一体何枚あるんだろ?
丁度、お昼にかかる頃にようやく撮影が終わった。
「瑞穂ちゃん、ありがとう。」
凛さんは、大満足と言って私を抱きしめた。
「こちらこそ、初めてなのにみなさんに良くしてもらって、助けてもらって…本当に楽しかったです。」
そう言うと、また拍手に包まれた。
心地よい疲れが私の心を満たしていた。
「明日は、着物だから今日より大変だけど、宜しくね。」
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