第4話

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「え…着物が着れるなんて嬉しいです。」 そう言うと凛さんは優しく微笑んだ。 控え室に戻ると、結城君がいた。 優しく微笑む姿にキュンとなる。 椅子に座らされ、結城君がベールを外し、ネックレスやピアスを一つずつ丁寧に外す。 お化粧を丁寧に落としてもらい、スッピンになった。 靴も脱がせてもらう…結城君に触れられた一つ一つが熱くなる。 きっと顔も赤いよね… さぁ、って手を差し出されその手を握り立ち上がる。 靴を脱ぐと、結城君がクスッと笑った。 「瑞穂って、こんなに小さい。」 そう言ってふんわりと抱きしめられた私は、結城君の胸にすっぽりはまっていた。 「瑞穂、今日はありがとう。俺ね、やっぱりこの仕事好きだわ。瑞穂のおかげ。」 そう言うとさらに結城君の腕は更に力が入って、私の首元に顔を埋めた。 「こちらこそありがとう。」 ドキドキと緊張の中、頑張れたのは結城君がいたから…そう、思いを込めて絞り出した声は結城君に届いたかな。 結城君の唇が私の唇に優しく触れる。 何度も角度を変えて…優しく。 結城君のシャツを握ると、また強く抱きしめられる。 繰り返されるキスに息が出来なくて、一瞬離れた時に大きく息を吸い込んだ。 結城君がクスッと笑い 「ごめん、瑞穂があまりに可愛いから離せなくなった。」 そう言われて身体中が火照る。 交わる視線…どちらからでも無く自然と重なる唇。 結城君の舌が私の舌を絡めとり…初めての大人のキス。 深く優しいキス…。 チュッと言って離れた唇が恋しいと思った。 「これ以上したら止めれなくなる。」 そう言われて、真っ赤な顔を見合わせて笑い合った。 「着替えておいて。家まで送るよ。なんなら脱がそうか?」 そう意地悪に笑う彼に、イーッてして試着室に入った。 扉を閉めた途端に、足の力が抜けて床にへなへなっと座り込んだ。 私…結城君のキス…嫌じゃなかった…抱きしめられて、嬉しかった。 このドキドキ…この気持ち… どうしよう…私…結城君に惹かれてる… 両手で顔を覆い、溢れた涙の意味を探す… …これはきっと “安心” と言う彼の存在が、私の心を満たしたのだと思った。
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