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“安心” 私が求めるものを見つけて与えてくれる…
結城君が隣にいる…見惚れていると
「何か?」
フッと笑った…あっ、右の頬にエクボ…
可愛い…中学の頃からモテていた事を思い出して、ぼんやりしていた。
結城君の足が止まる。
「俺の顔を見ながら、遠くの記憶を辿ってるの? 思い出した? 俺、イケメンだったでしょ。」
自慢気に笑うから、私まで可笑しくなって来た。
「…瑞穂、笑っててよ。 そうやって笑ってる瑞穂を見てると嬉しいんだ。」
そう言われて、顔が赤くなるのが分かった。
…このまま結城君に寄り添っていればきっと幸せだろうなぁ…
ふと、お母さんの言葉が頭をよぎる。
『お父さん、お母さんの事好きじゃなくなったんだって…』
私を不安にする言葉は、結城君といれば消えるのかな?
本当に消えるの?
「瑞穂…そんな顔しないで。寂しい思いさせないから。」
お姉さんの言う通り。
結城君は、エスパーかと思うくらいに人の心を読み取る。
「…着いたよ。」
何時の間にか、私のマンションの前に着いていた。
本当なら、お茶でも…なんて言うのが良いのかもしれない。
でも、言えなかった。
「結城君、今日はありがとう。撮影楽しかった。」
「うん。俺も。次は着物だから大変だけど、頑張って良い作品作ろうな。おやすみ。」
そう言って、笑って帰る結城君の後ろ姿を見つめていた。
…あのキス…このまま流されていいはずない…
恋愛経験ゼロの私も、それくらいは分かる。
結城君が角を曲がる時、ゆっくり振り返り、私と目が合うと大きく腕を振っていた。
思わず、私もピシッと腕を挙げると、クスクス笑っていた。
…私…カッコ悪い…
そう思いながら、少しホッとする自分がいた。
2人で歩く夜道は、安心出来るのに…心が揺れるのも分かっているのに…1人になるとホッとする。
この気持ちはどうして?
自分が分からないでいた。
エレベーターに乗り、カバンからキーケースを出そうとしたら、
「ない。…あれ? 鍵…」
冷や汗が出できて、必死に記憶を辿る…
あ…カバンから化粧ポーチを出す時に落とした?
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