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そして、週末…
駅前の居酒屋。
「私、行きたくない。」
「ほらぁ、今更なに言ってんの?」
「イヤイヤイヤイヤ~」
「子どもじゃないんだから、ダダこねない。すっぽかすなんて、後で余計に面倒になるでしょ?」
あ~そうだ… “家族” だから会うことあるもんね…
納得…って、でもイヤだぁ。
このまま帰ろうかな…
万樹と大学の友達2人は、先にお店に入ってしまった。
店の扉に手をかけていたのを、スッと離して、回れ右…
後で万樹にメールしよっと、一人頷き一歩踏みだした。
大きな壁にぶち当たり、よろける私。
と、同時にガチャ…何か踏んづけた…。
恐る恐る見上げると、ブラウンの瞳が私を見下ろしていた。
「す…すみません。」
咄嗟に頭を下げ、しゃがみ込み、ぐちゃぐちゃになったメガネを拾った。
ヤバイ…見るも無残な姿のメガネ…。
男性もしゃがみ込み、メガネに手を伸ばす。
「瑞穂ちゃん、帰る気だった?」
穏やかなトーンの声…
顔を見ると…?
誰だっけ?
「義兄を忘れた?まぁ、面識殆どないけど。」
今度は冷たく言い放たれた。
「メガネが無かったから、わからなくて…すいません。」
「そう…君がその足で踏んづけたからね。」
「すいません。」
ショボンと俯く私。
一応、“家族” …なのに義兄もわからない私って…
我ながら酷いかも…。
彼は、浅川 篤。私の義兄。
会話も殆どした事ない…だから分からなかった…
…結構冷たい感じ…。
「わ、私…大学に忘れ物して…だから今日はやめときます。」
今直ぐ走り去りたい…
「…逃げるの?」
その言葉にこめかみがピクッと波打つ。
振り返ると、意地悪そうに笑う義兄。
「で、帰るのは自由だけど、コレ弁償してくれるんだよね。」
そう言ってフチだけになったメガネをプラプラとさせている。
「弁償するわよ。すれば良いんでしょ。」
「じゃぁ、行こう。」
そう言って私の腕を掴んで歩き出した。
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