第1話

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そして、週末… 駅前の居酒屋。 「私、行きたくない。」 「ほらぁ、今更なに言ってんの?」 「イヤイヤイヤイヤ~」 「子どもじゃないんだから、ダダこねない。すっぽかすなんて、後で余計に面倒になるでしょ?」 あ~そうだ… “家族” だから会うことあるもんね… 納得…って、でもイヤだぁ。 このまま帰ろうかな… 万樹と大学の友達2人は、先にお店に入ってしまった。 店の扉に手をかけていたのを、スッと離して、回れ右… 後で万樹にメールしよっと、一人頷き一歩踏みだした。 大きな壁にぶち当たり、よろける私。 と、同時にガチャ…何か踏んづけた…。 恐る恐る見上げると、ブラウンの瞳が私を見下ろしていた。 「す…すみません。」 咄嗟に頭を下げ、しゃがみ込み、ぐちゃぐちゃになったメガネを拾った。 ヤバイ…見るも無残な姿のメガネ…。 男性もしゃがみ込み、メガネに手を伸ばす。 「瑞穂ちゃん、帰る気だった?」 穏やかなトーンの声… 顔を見ると…? 誰だっけ? 「義兄を忘れた?まぁ、面識殆どないけど。」 今度は冷たく言い放たれた。 「メガネが無かったから、わからなくて…すいません。」 「そう…君がその足で踏んづけたからね。」 「すいません。」 ショボンと俯く私。 一応、“家族” …なのに義兄もわからない私って… 我ながら酷いかも…。 彼は、浅川 篤。私の義兄。 会話も殆どした事ない…だから分からなかった… …結構冷たい感じ…。 「わ、私…大学に忘れ物して…だから今日はやめときます。」 今直ぐ走り去りたい… 「…逃げるの?」 その言葉にこめかみがピクッと波打つ。 振り返ると、意地悪そうに笑う義兄。 「で、帰るのは自由だけど、コレ弁償してくれるんだよね。」 そう言ってフチだけになったメガネをプラプラとさせている。 「弁償するわよ。すれば良いんでしょ。」 「じゃぁ、行こう。」 そう言って私の腕を掴んで歩き出した。
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