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連れてこられたのは、ブランドショップが立ち並ぶ大人の街。その一角にあるセレブ御用達の有名メガネショップ。
貧乏大学生の私が、これるわけない。
「あの…。」
義兄を見上げると、冷ややかな瞳で私を見下ろした…。
「俺のメガネ、ここのなんだ。」
…一切値札のついていないメガネ達…
どう見ても高価でしょ…。
「これにしよっかな。瑞穂どう?」
おしゃれで知的な感じのメガネをかけ、ニッコリ笑って私を見る義兄。
…何でも良いんじゃない?
な~んて、口が裂けても言えない。
「はい…お似合いです。」
何となく作り笑いをした。
すると、ムスッとした義兄…。
「やっぱりこれにするよ。」
「こちらはイタリア製で、職人が丹精込めて創り上げた一点物です。」
マジッ…。それ買うの?いくらよ?私お金ないよ…。
顔面蒼白で義兄を見ると、ニヤリと笑った。
「お会計失礼します。10万円でございます。」
ゲッ…空いた口が塞がらない…。
義兄は、私を見てまたニヤリと笑った。
お会計を済ませ、店を出た。
「あの…私そんな大金持ってないですよ。ローンでいいでしょうか?」
泣きそう…私のお小遣いが…就活でバイトも出来ない現状…。
夜の仕事でもしなきゃ…
なんてバカな発想が頭を巡る…。
「夜のバイトしてもらうよ。」
耳を疑った…義兄を見ると不適な笑い。
「な…っ。」
焦る私。よっ…夜っていったら、そうゆう事よね?
私…
「無理無理無理。私経験ないしっ。」
動揺して思わず心の声が出てしまった…。
ハッとして両手で口を抑えた。
「ふ~ん。バージンなんだ。遊んでるのかと思った。」
私を下から上まで見る義兄。
…酷い…人を見た目で判断するの?
涙が零れた…。
「でも…ちが…」
そう言いかけた、義兄の頬を思いっきりぶった。
そして、
「メガネ代は必ずお返しします。」
そう行って走り去った。
呆然と私を見る義兄を置き去りにして…
涙が止まらなかった…過去の苦い経験が頭をよぎった…
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