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「おい、刹那。どうしたんだよ?…って聞いたら悪いか」
前の席の倉科が椅子をガタガタ言わせて振り返った。
半笑いのその顔がムカつく。
「うっせぇよ」
分かってたら聞くんじゃねぇよ。
「わりぃ、悪気はないんだ」
許してくれと大袈裟につけ加え、あははと笑う倉科を一瞬睨み、刹那はまたため息をついた。
「倉、あとでノート見せてくれ」
「あー、いいけど。オレもぶっちゃけ途中で落ちちゃってさぁ。読めたもんじゃねぇぞ?」
「マジか…。お前に頼んだオレが悪かったわ」
赤点だなんだとしょっちゅう騒いでる倉科は、野球バカで朝練に疲れて寝てることが多い。
「そーだぞ。ノート録るのはお前の役目だろ~、刹那」
お前がそんなんじゃオレが困るだろ、なんてさも当然とばかりに胸を張ってくる。
「いやいやお前も録れよ」
「工藤に頼めばいいじゃねえか」
「…葵に、」
工藤葵。
彼女に頼めば、それはそれは完璧なノートに違いない。
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