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ずっと黙って二人のやり取りを眺めていた倉科が、しみじみ呟いた。
「お前も大変だな……」
「まぁな」
あの調子だと絶対放課後ついてくる。
あることないこと喋るんだろうな……と思ったらちょっと頭が痛くなった。
「お、雪だ。3月だってのにまだ降るか」
前に向き直りながら倉科は大袈裟に身震いした。
刹那も同じように窓の外に視線を移し、降り始めた雪を眺めた。
あの日も雪が降っていて。
凍えそうに寒くて。
考えたくないのに、雪がまた思い出させる。
大丈夫だっただろうか。
触れた時に聞こえた、気味の悪い声。
泥のような得体の知れない感触。
怖いと思うのに。
嫌だと思うの、に……。
なんでこんなにも気になっているんだろう。
……もう一度会えたら、それが分かるのだろうか。
灰色に沈んだ空から落ちる真っ白な結晶を見つめながら、刹那はそんなことばかりを考えていた。
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