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ひらりひらりと、それは花びらのように。
灰色の厚い雲に覆われた空から、小さな白い結晶を落とす。
まるで頬を滑り落ちる涙のようだ。
刹那は頬に触れた冷たさに身を竦めて、空を仰いだ。
「雪……」
冷えるはずだ。白いマフラーに顎を埋めるが肌に触れる空気が冷たすぎて、何よりこんな寒さの中、一時間以上この場所にいる体は芯から冷えきっていて。
マフラーぐらいでは寒さを凌げるはずもない。
「マジで来ないとか…な、」
待ち合わせは、5時。見上げた時計台の針はもうすぐ6時を指そうとしている。
小さく呟いた言葉に、返してくれる人はいなくて。
寒い。
手袋をしてない手はかじかんで、既に感覚がない。
でも、そんなことよりも。
来ないのは、わかってたのに。
突きつけられた現実を認めないわけにはいかなくなってしまって。
(やべ……泣きそう)
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