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「前から少し思ってたけど、トキの指って、なんか丸っこいね」
私がそう言うとトキはサッと手を引っ込めて、カラカラと笑った。
「これ、実は病気の症状の一つなんだ。ごめん。気持ち悪いよね」
「え? 別にそう言う意味で言ったんじゃないよ。気にしてたならごめん」
「そ? あ、見て! 俺ね、親指こんなに反り返るんだよね」
トキはググッと親指と親指をくっつけて反らせた。私もやってみたけど、できなかった。
「こんなの無理だよ。ってゆーか、これの方が身体の仕組み的に無理じゃない?」
クスクス2人でひとしきり笑ってから、また、トキに数学を教えてもらった。
この時のことを、私はずっと後になってから、何度も思い出すようになる。
指のことを本当は、トキはすごく気にしていて、それでも、こんな風に違う出来事に差し替える事が、彼にはできた。
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