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生徒を校舎内から完全に追い出すための放送が流れて、私たちは校門を出た。空気の冷たさに鼻がつんとする。
私はマフラーをぐるぐるに巻き直した。落ちかけた日暮れの空には、猫の爪みたいな細い月が寒そうに薄く光っていた。
一人でいたら、理由もなく泣いてしまいそうだった。
「トキの家って、300m先なんでしょ? ねえ、そこまでみんなで歩いて行こっか?」
「春野さん……。ゴメン。なんかトラウマにさせちゃった? めったにこないだみたいな事にはなんないから」
「えー別にそういうんじゃなくて、好奇心だから。写真屋さんの近くって家とかあったっけ? みたいな」
結局ああだこうだ言っている間に遠藤がスタスタ歩き始めて、私たちはその後をついて行った。
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