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ベッドに括られ点滴を流された。
担当医師がやってきて、看護師に指示を出す。
「順調に回復しているようですね。そろそろ食事訓練を始めましょう」
食べる気力も無くしていた僕は、点滴が抜けた後も食事を摂ることをしなかった。
薬も要らない。
動かす事の出来ない拘束された左手首の処置が僕の意思とは関係なく行われる日々。
目も開けず、口もきかない。
今日が何月何日なのかも分からない状態で、ただ暗闇にその身を置いた。
食事を摂らない体は痩せ細り、また点滴で命を繋ぐ。
「塚本さんって、もう喋る事が出来ないんじゃない?」
「あの若さで可哀想に・・・」
「もう無理だな」
看護師は、反応を示さない僕の横で口々に想像を膨らませる。
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