闇中

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そんな日常が続いていたある日、年配看護師らしき声が話しかけてきた。 「聞こえてるんでしょ? まだまだ人生長いわよ。 ずっとこのままで寝たきりになる気?」 いつもの苛ついている看護師達とは違う叱咤する言葉は何処か優しさを感じる。 「今日は綺麗にするわよ。身だしなみよ♪」 手足の抑制帯が外され、縛られていた部分を掻い撫でると、手を添えて摩ってくれた。 「逃げようとか、変な気はおこさないでね。筋肉無くなってるから転んで怪我しちゃうからね」 エレベーターに乗り、廊下を数回曲がり、車椅子は止まる。 「着いたわよ」 寝ていた場所とは違い、湿気と石鹸の匂いが充満している場所で椅子にロックがかけられた。
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