闇中

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『待ってましたよ。随分伸ばしましたね~。髭もあたりましょう』 部屋に入るなり、いきなり髪を触られて緊張が走る。 若い男性の透き通る声で迎えられた。 僕のアナムネは概略説明済みなのだろう。 喋らなくても、目を開けなくても不審がられる事もないようだ。 『シャンプーから始めますよ』 手を引いて誘導されたシャンプー台で丁寧に洗ってもらった。 『カットするけど・・・何か要望はある?』 『・・・・・』 『じゃ、任せてくださいね』 無言の僕に残念そうに一言告げると、慣れた手つきで櫛を入れ髪を束にしていく。 シャッシャッと軽快に切られていく僕の髪。 時おり櫛でとかしながら、切られた黒い固まりが肩に落ちてくる。
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