第1章

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 俺は見た目も中身も今急増中の草食系男子で女子の事も大して気にしてない派の人間だ。だが、陸は名前がにんにくに似ている事から「にんにくん」と呼ばれる程見た目も中身も名前までも肉食系の男子だ。  頻繁にクラスメイトから何故仲が良いのか不思議がられるが、真逆ってことでバランスが取れているのかもしれない。  まぁ自分でもなんでこいつと仲が良いのかよくわからないが。  そんな「にんにくん」こと加賀陸は毎年四月になるとクラスの女子の話をする。人生において女子は最も大切らしい。が、陸には彼女は当然いない。  こんな男臭いやつに彼女ができてたまるか。 「あんだよ、つまんねー雄だなお前は。俺は去年Fクラスだった神取葵(かんどりあおい)が一番の上玉だと思うな。あの凛とした目線、白い素肌に艶のある黒髪ロング、どう考えても彼女が一番だろ!」  神取か。この間見掛けたけど確かに神取は美人だったな。  というか、クラスメイトなのに見掛けたって表現は間違っている様な気もするけどやつに限っては正しいよな。だって誰かと喋っている時なんて見た事ないし。  けれどそんな謎キャラというのも相まって人気は高いと聞くな。 「うん、厳しい戦いだと思うけど頑張れよ」  陸は神取葵の事を思い出したのか、目元がとろけた様な顔をして俺の言葉なんててんで耳に入ってない様子だ。 「おうよっ!頑張るさ、なんでも気合いだよな真悟!失敗したらただ単に気合いが足りなかっただけの事!」 「お前いっつもそう言うけどさ、要は気合いの有無で改善点を有耶無耶にしてるだけだろ」 「真悟は何事も深く考え過ぎなんだよ、もっとラフに考えようぜ?気合いで何とかなるもんは何とかなるんだよ。むしろ気合いでなんとかならない物なんて何もないっ」  俺はいつもながら大雑把な考えの陸をジト目で睨むが、どんっと胸を叩いて自信満々の御様子。  気合いの有無が全てを担う彼の思考についてもう論争するのはやめておこう。  ただの時間の無駄だ。 「中学の時から毎年毎年女子の格付けをしてるけど、お前彼女とかって出来た事あるのか?全然そういう話聞かないからさ」 「お、おま…お前さん、馬鹿いっちゃあいけねぇ。彼女なんて出来た事無いに決まってるだろうが!」  やはりそうだったか。部活が休みの時毎回俺と遊んでるやつに彼女なんている筈がない。
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