42人が本棚に入れています
本棚に追加
辰也は今この時を生きる人間である。
もともとが霊や魂の世界などに興味は無いし、囚われるつもりも無い。
自分は美加を愛している。
その気持ちに偽りも揺るぎも無かったが、同時に、クジナを愛する想いにも偽りは無かった。
辰也はロマンチストだが現実主義な男である。
素直に、あるがままに、二つの愛を受け入れて
『今』を生きていた。
したがって、クジナの事を思い出す事は滅多には無かった。
では何故、美加を口説かないのか?
率直に言えば自信が無かった。
美加を愛している。
その想いは子供の頃に美加と出逢い感じた
『好き』と言う気持ちが年月と共に成長し、熟成したモノである。
もはや揺るぐ事の無い気持ちであった。
だが、果して美加はどうなのか?
自分は美加を幸せに出来るのだろうか?
自分以上に美加の夫として相応しい男がいるのではないだろうか?
そう考え出すと踏ん切りがつかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!