42人が本棚に入れています
本棚に追加
P.m.9:20
(ったく……酔っぱらい三蔵法師と
その御一行樣かよ……)
辰也はカウンター席へと移動してきた美加達を前に、顔をひきつらせながら腕組みをしていた。
テレビドラマの西遊記では、過去に数作品の女優キャスティングによる三蔵法師が演じられてきたが、仮に美加を三蔵法師と例えるなら、美加の連れて来た三人は、その御一行樣と例えるのにピッタリな面子だった。
先ず、左端に沙悟浄。
長髪で色白な二十歳そこそこの若者。カウンターに移動するなり、熱心に携帯電話を見つめ、完全に自分の世界に没頭している。
(……家でやれよ)
次いで、その隣の猪八戒。
二十代後半の小太りな男で、脂ぎった顔に汗を浮かべながら、ガツガツとナポリタンを貪るように食っている。
(……もっとキレイに食えよ)
その隣に美加。
酔っ払い、トロンとした瞳に知性は無い。三蔵法師と例えるにはあまりに不適合である。が、美人ではある。
(…………………)
そして右端に孫悟空。
酒井と言うスーツの男である。
悟浄と八戒に害は無い。
問題は悟空。酒井であった。
請け負いで仕事をしている美加とは違い、三人とも会社の社員との事だったが、酒井は半年前に東京本社から来た課長であった。
つまり昨夜、美加の言っていた、美加を口説いていると言う男である。
最初のコメントを投稿しよう!