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酒井は細身のビジネススーツ姿であったが、ロレックスの腕時計にダンヒルのライター…… 身に付けた小物からも、お洒落に気を配るタイプの男であると窺い知る事が出来たが、ブランド物にこだわるサラリーマンというのは、辰也にとってはイケ好かないタイプの男である。 背丈は中肉中背。 カット時のデザイン通りにセットされた短髪は、揉み上げが長い。 顔はイケメンの部類に入るが、中途半端に貧相な猿顔は、ゴリラに例えられる人間が持つワイルドさは皆無で、サル山のNo.2が持つ、ひねた小賢しさを感じさせた。 こちらも辰也にとっては嫌いなタイプと言える。 酒井は隣の席の美加に、自分の過去の女性遍歴を熱弁している最中で、美加はそれに合図ちを打っている。 美加の瞳は潤んだように見える。 たんなる酔っ払いなだけで、酒井の話は耳を素通りしていたのだが、その瞳で酒井を見つめていた為に、酒井は誤解をし、辰也はヤキモキとしていた。
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