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「あのスーツの奴の手見て…… 桃華のママの膝の上にあるし、桃華のママも満更でも無い感じなんじゃないかなあー」 確かに、酒井の手は隣の席に座った美加の膝にあり、美加はそれを払い除けずに、寄り添い気味で酒井の隣に座っていた。 「あのババァー……マリちゃん。あの男、ブッ飛ばして来て良い?」 一瞬でヒートアップした桃華がマリに了解を取る。 昔の桃華からは想像が付かないが、現在の桃華はかなり喧嘩っ早い。 だが、喧嘩っ早くなった桃華の変貌に、辰也も美加も驚いてはいなかった。 辰也に言わせれば 「美加の娘なんだから仕方ないだろ」 その一言で片付けてられていたし、美加に至っては、泣き虫だった幼少時代。グレまくった十代。 自分自身の過去を振り返り、悪い所を遺伝させてしまったと、不本意ながらも納得していた。 「もう……気が早いなあー  短気は損気って言うじゃん」 マリが笑いながら答える。 「マスターはどうするつもりかなあー」 言いながら辰也の後ろ姿を見つめる。 「マリちゃん。  ………どうしよう…………  私、辰ちゃん以外は嫌だよ!  この町に来て……  ずっと……  辰ちゃんが私のパパだったんだ!!」
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