8/11
前へ
/36ページ
次へ
これと言った明確な理由があるわけでは無かった。 だが、問題が無いわけでも無い。 以前、桃華に取り憑いていた霊。クジナ。 辰也はクジナを、自分の前世の恋人であると実感しながら送った。 クジナは霊である。 もともとこの世界の存在では無いし、今はこの世界には居ない。 クジナと過ごした時間も、ほんの一時である。 しかし、魂の結び付きは、時間も空間も すべてを超越していた。 そもそも、霊であるクジナの存在は 『想い』 つまり想念の、実体なき存在であった。 その存在が辰也との出逢いにより、魂として覚醒してしまったのだ。 クジナの魂が、辰也の魂を目覚めさせ  二人の魂は一つになった……… 辰也は、自身の魂を二つに引き裂く痛みと共に、クジナを送った。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加