第1章

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 ガチャン。ガチャン。ガチャン。  容器を入れていく度に、鉄がプラスチックにぶつかり、音を奏でている。  一定に流れる音に合わせて、体を動かす。たった、10本の容器を入れていく作業が長いように感じた。  喉の奥に魚の小骨が詰まったような感覚は、あまり気持ちいいものではない。俺は沈黙に耐えられなくなり、誤解をとくために言った。 「あ、あのさ。嘘みたいな感じになったけど、嘘を言ってるつもりはないんだ」 「はい。それは、僕にもわかります」  彼が言った言葉に違和感を感じる。僕にもわかるだと?言い方の問題だと思うが、彼の言葉に苛立ちを隠せないでいた。  俺は、怒鳴るのを我慢して呟くように言った。 「なんで?」 「えっと、あなたの名前を聞いて良いですか?」 「俺?俺の名前は、相模 弦一郎(さがみ げんいちろう)。」 「やっぱりそうでしたか…」  話の内容が見えない問答だ。俺は、薄笑いを浮かべ言った。 「やっぱり?やっぱりって、どういうこだ?俺にもわかるように説明してくれ」  彼が俺のことを見えているのかさえわからない。目は、ついていないし口もスピーカーもない。今更なのかもしれないが、自販機を眺めていたら頭が混乱してきた。  そんな、俺を目の前に彼は冷静な口調で言った。
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