第1章

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 俺は、呟いた。 「だそうです…か…」 「え?」 俺の考えていたことは、いったい何だったんだろう。彼は、業者の言葉を鵜呑みにしているだけで、なんの根拠もない。  それに飲み物を補充してくれる業者がいるとは思いもしなかった。  訳のわからない世界に迷い込んだのを今更ながら戸惑う。こんな状態で彼と話をしていても納得のいく答えなんてでてこないんじゃないか。俺はそう思った。 「まあ、いいや。とりあえず、飲み物の容器だけど全部入れ終わったから」  俺は、そう言って扉を閉めた。 「ありがとうございます。あと、飲み物の入れ方なんですけど…」 「え!?今!?」  俺が聞かなかったのも悪い。だけどなんで今なんだ。俺が驚いた様子を見て彼も驚いたようだった。  彼は、飲料の入った容器を溝に吐き出した。 「え!知らないで入れていたんですか?」 「知らないよ。んで、どうやって入れんの?」  吐き出した容器は、さっき俺が入れていた容器と同じ銘柄だった。  それを一本ずつ取り出して、地面に置いてから扉を再び開けた。 「えっと、扉を開けたら下の方にシールがついているんです。そこに銘柄の頭文字が英語で記載されているんでそこを見ながら入れてください」  彼が言ったのは、このシールのことだろうか。俺は、穴の開いた部分の下の方にあるシールを確認した。  そこには、彼が言った通り、銘柄の頭文字が英語で記載されている。それを確認しながら、一つ一つ飲料の入った容器を穴に入れていった。 「飲み物の入れ方もその…補充をしてくれる業者さんに教わったの?」  なぜ教えたのかは、理解できなかった。  それでも、知っているということは教えたに違いない。もしかしたら、言葉を教えたのも、その業者なのだろうか。そんな疑問を抱いたものの、追求したところでなんの意味もないような気がした。
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