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業者が俺達の目の前に現れたのはそれから、しばらくした頃だった。
業者を待っている間に彼と話し合った結果。自販機である彼。改め自販機くんが、業者に俺のことを紹介することに決定した。
グレーの作業服を着ている業者が、台車を押しながら俺達の目の前に現れ、業者は小さくお辞儀をした。
自販機くんは、業者が目の前に来たことを認識したようだ。ボタンが赤くなり、波をうつように点滅している。自販機くんは、言った。
「あ、あのこんにちわ」
「…ひっ!?」
業者は、小さな悲鳴を上げ、手に持っていた鍵を落とした。
業者は、自販機くんの隣に止めていた台車の方に慌てた様子で向かった。
「また、逃げるの?」
俺は、反射的に業者の腕を掴んでいた。
「だ、だって逃げるだろう!?なんなんだよここは!?いったいなんなんだよ!?俺は、ただ仮眠をとっているだけなんだぞ!?なんで、休憩時間も働かなくちゃいけないんだよ…。なあ、教えてくれよ…」
業者は、半狂乱になりながら俺の襟首を掴んだあと、その場に崩れ落ちた。
俺は、状況が飲み込めなかった。
「え、えーと…どういうこと?」
俺の足にしがみつく業者から、自販機くんに視線を移すと、明らかに戸惑っている。
「あ、あわわわわわ」
自販機くんは、こんな状況になることを想定していなかったのか、溝にペットボトルや缶を落としている。
それを見ていた業者は、おもむろに立ち上がった。
「なんで…なんで…入れた物を落とすんだよー!!」
業者は、そう言うと自販機くんに殴りかかろうとしている。俺は、空になったペットボトルを慌てて地面に置き、荒れ狂う業者を羽交い締めにした。
「や、やめろって!それが、自販機くんの仕事なんだからしょうがないだろう!」
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