第1章

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 ここは、どこだろう。  目の前にあったのは、交差点だったがいつもと違うように思えた。  信号機がうねったようにゆがんでいる。歩道帯の上を歩く人に事情を聞いてみることにした。 「あの、すいません」  他人と喋ることが苦手な俺が、声をかけるなんて。自分が自分では、ないような気さえした。 「なんですか?」  俺が声をかけた通行人は、男性だった。 「あの、信号機。ゆがんでいるんですけどなにかあったんですか?」  俺がそう言うと男性は、顔に微笑を浮かべた。 「事故ですよ」 「え?事故?」  事故でこんなにも信号機がゆがむなんて。そもそも、男性は、冗談を言っているに違いない。どうにも腑に落ちないので、そう決めつけた。 「そうなんですか。じゃあ、どんな事故だったんですか?」 「そ、それは」  やはり冗談だった。  くだらない冗談を言う人もいるんだな。そんなことを考えながら、男性が何かを言い終える前に俺は、歩道帯を再び歩くことにした。  男性は、追いかけてこない。酷いことをしたかな。そう思って後ろを振り返った。  いない…。さっきまで、並んで歩いていたのに男性は、あとかたもなくその場から消えていた。  冷静になって考えると、疑問ばかりが頭の中に浮かび上がってくる。そもそも、車が走っていない。周りを見渡しても、ほとんど何もなかった。
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