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とりあえず、自動販売機へ行って飲み物を買ってから、考えればいいか。異常な状況を目の前にしても、パニックに陥ることはなかった。
それよりも、楽しいと感じる。焦って現実に帰るのは、つまらないことだ。何故だか、不思議なもので俺は夢をみているのだと理解することができた。
足を交互に浮かせて、弾む気持ちを体で表現した。
端から見れば何をスキップしているんだと、影で言われるかもしれないが、ここは夢の中であって現実ではない。自分が作り出した虚構の世界なんだ。周囲には、何人かの人がいたのだが、俺は堂々とした態度で自動販売機がある場所へと向かった。
目の前には、自動販売機がある。けれども、普通の自動販売機だった。
この自動販売機に喋る機能が付いていたならば、どんなに楽しいだろう。夢の中にいるはずの俺が、妄想しているのは何だかおかしな気がしてならなかった。
ズボンのポケットから、財布を取り出そうとしたが、財布はポケットに入っていなかった。
財布を頭の中で思い浮かべれば出てくるんじゃないか。良い案を閃いたので実行にうつしてみたものの、財布がポケットからでてくる気配はなかった。
金が無いなら押せばいい。誰かが言っていたのを思い出しながら、試しに自販機の前に立って、ボタンを押してみることにした。
自販機から、ガシャンとペットボトルが出てくる音がした。
俺は右手を、取り出し口の溝にいれた。
「こんにちは」
どこからか、声がする。
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