第1章

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 彼は考えているようで、少し間をおいてから言った。 「それが、僕にもわからないんですよ。どうしてこうなったのか…。気づいたら自販機で…」 「気づいたら自販機って…」 「ほ、本当です!!信じてください!!」  じゃあ、さっきの間はなんだったんだ。そう言ってやりたい。けれど、あまりにも必死な声に気圧されて、言えなかった。 「うーん」  俺は唸りながら、しばらく考えた。  彼の身に何がおきたのか。そのことがどうも気になる。考えても彼がなぜ、自販機になってしまったのか、その理由はわからない。ただ、面白そうだと思った。 「ど、どうしたんですか…?」 「うん。決めた!」 「な、何をですか!?」  明らかに動揺を隠せていない。声だけで相手の気持ちを察するのは難しいことだが、彼の場合は簡単だった。 「君の過去を探そう!」 「え?…あ、あの…ちょっと何を言っているのかわからないんですけど…」  俺は、彼の気持ちを無視して、計画性のない話を一方的に押しつけた。 「だから、君の過去を探そう!」 「いや…そういう意味じゃないんですけど…」  なかなか、折れてくれない。ここは、自分の気持ちを全面に出していこう。俺は、両手を広げながら言った。 「わかってるよ。君には本当のことを言おう。…俺はこの世界の神なんだ!だから、君の過去を知りたい!」  自分で言って後悔した。  彼は俺の言葉を聞いて驚いたのか、飲み物の入った缶やペットボトルを自分の溝に落とした。 「ほ、ほ、ほ、本当なんですか…?」  俺は、この10本近い飲み物を飲まなければならないんだろうか。そんなことを考えながら、彼の溝に手を入れてペットボトルと缶を取り出した。
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