11人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は考えているようで、少し間をおいてから言った。
「それが、僕にもわからないんですよ。どうしてこうなったのか…。気づいたら自販機で…」
「気づいたら自販機って…」
「ほ、本当です!!信じてください!!」
じゃあ、さっきの間はなんだったんだ。そう言ってやりたい。けれど、あまりにも必死な声に気圧されて、言えなかった。
「うーん」
俺は唸りながら、しばらく考えた。
彼の身に何がおきたのか。そのことがどうも気になる。考えても彼がなぜ、自販機になってしまったのか、その理由はわからない。ただ、面白そうだと思った。
「ど、どうしたんですか…?」
「うん。決めた!」
「な、何をですか!?」
明らかに動揺を隠せていない。声だけで相手の気持ちを察するのは難しいことだが、彼の場合は簡単だった。
「君の過去を探そう!」
「え?…あ、あの…ちょっと何を言っているのかわからないんですけど…」
俺は、彼の気持ちを無視して、計画性のない話を一方的に押しつけた。
「だから、君の過去を探そう!」
「いや…そういう意味じゃないんですけど…」
なかなか、折れてくれない。ここは、自分の気持ちを全面に出していこう。俺は、両手を広げながら言った。
「わかってるよ。君には本当のことを言おう。…俺はこの世界の神なんだ!だから、君の過去を知りたい!」
自分で言って後悔した。
彼は俺の言葉を聞いて驚いたのか、飲み物の入った缶やペットボトルを自分の溝に落とした。
「ほ、ほ、ほ、本当なんですか…?」
俺は、この10本近い飲み物を飲まなければならないんだろうか。そんなことを考えながら、彼の溝に手を入れてペットボトルと缶を取り出した。
最初のコメントを投稿しよう!