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「こんな馬鹿な事は止めるんだ」
その発言に、彼は眉根を寄せた。余りにも定型的な台詞もそうだが、語調が不自然なのだ。それはまるで、台本を読んだだけのような、気持ちの籠もっていないものだった。
怪訝に思う彼に対して、男は一歩、距離を詰める。まるで撃ってくれと言わんばかりに両腕を広げて。
「こんなことが上手くいくと思っているのか?」
その奇異さに彼はたじろぎ、銃を両手で構えて半歩退く。
「なっ……何なんだお前は!?死にたいのか!」
すると、男は弱々しく笑んで、かぶりを振った。
「いいや、本当はもっと生きたかったよ」
目を落とし、ひとりごちるように零れ出たその言葉が、男の本音であることを、彼は感じた。そして、男がほぞを固めていることも。しかし、何故?
その時、仲間の一喝が彼の頬を打った。
「何ぼうっとしてんだ!早く殺せ!」
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