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コトッ
いつの間にかジュージューと音を立ててハンバーグが出来ていた。
テーブルにハンバーグとオニオンスープとカボチャサラダが並ぶ。
全部、八歳だった俺の好きだったメニューだ。
「――それで、大学に行ってけいくんは何を目指すんですか?」
「手堅く公務員か銀行員」
安定した職しか考えてない。
「あー……。スーツ姿のけい君も良いですね」
サラダを俺に盛ってくれながら、ウンウン頷く。
「フリーのスタイリストなんて安定しないだろ?
でも葉月は好きだから辞めたくない。なら俺が稼げばいい話」
「…………」
葉月はサラダを分ける手をピタリと止めると目を伏せた。
「俺は、けい君が店を継がないなら店を辞めてスタイリストだけでやっていこうと思ってます」
「はぁ!?」
デミグラスソースを掛けてくれたら、下の鉄板がジューッと湯気を立てて薫りを放った。
というか。
「俺が店を継げば、葉月を店に縛れるってこと?」
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