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学校が終わると真っ直ぐに、自宅ではなく一階のヘアサロン『Sognare』のドアを潜る。
イタリアのアンティークな家具や小物で着飾ったレトロなヘアサロン。
若者よりやや年配の上品なお客が多いこのヘアサロン。
だけど、あいつが来てからは女の若い利用客も増えてきた。
「けい君、おかえり」
客のシャンプーをしていた葉月が俺を見てふんわり笑う。
――今日は居たのか。
俺は睨み付けるとソファにカバンを投げて、座り、葉月の仕事姿を睨み付ける。
色素の薄い髪に、瞳に、すらりと伸びた手足は白い。
外国人みたいな綺麗な横顔の葉月を、じっとじっと見つめる。
葉月はフリーのスタイリスト兼うちの店のスタッフ。
10年前にスタイリストを夢見てうちに就職しつつ活動していた。
今じゃスタイリストの仕事が多くて店に入るのは週一か二か。
だから常にお客が殺到して予約はぎゅうぎゅう。
二人で話す時間もない。
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